ここのところ、SUBARUという会社が元気に見えるのは私の錯覚でしょうか。BRZのようなスポーツカーのリリースはもとより、レガシィDIT、インプレッサXV、新型フォレスターなど、他社メーカーとは一線を画したラインナップ――いやらしい言い方をすればカネと手間がかかるクルマが続々とリリースされています。世界規模で見ても経済状況が良いとは言えない中で、コストダウンを少なからず犠牲にしてまでもこの類のクルマを生産する・出来るのは何故なのでしょうか。今回はこの個人的な興味の探究についてお付き合いいただきたいと思います。

私は、SUBARUのクルマづくりは思想からして違うのだと考えます。いままでコラムでもしつこく言わせていただいてきた通り、クルマというのはただの移動手段ではない。あえて例えるなら”靴”ではないでしょうか。靴、といえば草履やサンダルなどから革靴、スニーカー、ブーツ、はたまたスパイクシューズまで、その種類は多岐に渡ります。もちろんどの履き物でも移動をすることは可能です。しかし履き心地、デザインや耐久性、ソールのグリップ、撥水性...など「移動」という本質以外にも気を配ることが靴の価値を高めることは当然のことです。この例から導くと、近年のクルマには”スリッパ”なるクルマが増えていると感じるのです。薄くて脱ぎ着が簡単なので、特に気に留めることなく「移動」が出来ます。ですが、使う度に磨いたり、部品を交換したり、修理に出したり、ただ単に眺めてみたり...ということは少ないと思います。私が気に入らないのはこの点なのです。確かにスリッパは安価で、いっときは省エネルギーかもしれません。しかし、モノに愛着を持って永く使う、という本当のエコに全くもって結びついていないクルマが大量に作られているのが現状なのです。

そんな中で私がSUBARUを評価するのは、クルマに対して「移動」以外の付加価値を高めることに尽力しているからです。それが顕著に現れているのがTVCMではないでしょうか。(一部例外もあるが)SUBARUのCMはとにかくクルマが映る。やたらにタレントやCGを使ったりはせずに、山道やテストコース、サーキットなど、各々のキャラに合わせたロケーションを使い、プロモーションをしています。このようにクルマが「走る」コマーシャルが出来るのは「走りの質」に自信を持っているからではないでしょうか。「走りの質」というその大切な、しかし現在の日本の自動車業界では忘れ去られかけている大事な価値を頑なにSUBARUは貫いています。このような大切な価値があるからこそモノを大切にしたいと思うし、それが本当のエコになるのだと考えています。

SUBARUという会社はしばしば独自性という言葉で表現されがちですが、クルマ造りにおいて「走りの質」を追求することは当然であると思うのです。これは独自…というむしろよりメーカーとして本来あるべき姿なのではと感じます。けれでもその独自に惚れているというのは、全く皮肉なものです。


懐古主義のスバリストより